「事業投資」と聞いて、ピンとくる人の方が少ないかもしれない。私も不動産投資や株式投資をするまでは、「投資」は全く身近ではなかった。では、なぜ投資を始めたのか?それは、サラリーマンを辞めて独立してからしばらくして、食べるのに困った経験をしたからである。
当時、独立コンサルタントやっていたが、リーマンショックによって急激に新規プロジェクトが無くなり、働く場所を失った。働きたくても仕事が無いほどつらいものはない。独立していると、新規契約が取れなければ収入も無くなる。減っていく銀行口座の預金残高を見て、どうしようもない恐怖に襲われた。このまま残高がゼロになったら、どうしよう?どうやって家族を食べさせていけばよいのだろう?ちょうど、長男が生まれたばかりだったので、相当精神的には辛かった記憶がある。
サラリーマン時代にも似たような経験はあった。外資系大手IT企業でコンサルタントをやっていた頃、社内失業を目の当たりにしたことがある。ご存知かもしれないが、コンサルタントはプロジェクトベースで働いている。新しいプロジェクトを受注すると、配属可能なコンサルタントのリストから人選が行われ、プロジェクトに投入される。良い仕事をすると、次のプロジェクトでも声がかかる。逆に、成果が上がらないとプロジェクト中にもかかわらず、お客さんであるクライアントから「返品」されたりする。つまり選手交代である。
お客さんも高額を払ってコンサルタントを雇うわけだから、成果を出せないコンサルタントは全く不要なので、当然なのだが、これは結構つらい。結果、社内失業する人が出てくる。そして、コンサルタントは「稼働率」で社内管理されているので、稼働率が低いと評価も下がり、本人もだんだん居場所が無くなり、会社を去っていくという仕組みが出来上がっている。
普通のサラリーマンと比べても、全然厳しい世界だったが、そのサラリーマン・コンサルタントより独立コンサルタントは断然厳しかった。仕事があるときは、正直結構儲かった。大した経費もかからないため、コンサルフィーは全て収入である。でも、仕事が無くなれば、来月から収入ゼロ。サラリーマンはそこまで極端ではない。社内失業したって、半年ぐらいは他のコンサルタントの稼ぎで食わせてもらえる。
当たり前だが、独立すると儲かれば全て利益。損すれば全てを負うことになる。その変動幅がすごかった。独身だったら、多少の貯金で生活費も切り詰めて、なんとかしのぐこともできるかもしれない。でも家族がいるとそうはいかない。世のサラリーマンが簡単に独立できないのは、こういうことかと痛感されられたのだ。
そして、私はどうしたかというと、なんとかして景気に左右されず、継続して入る収入を確保する方法をとにかく考えた。新たな事業を起業する、サラリーマンに戻る、なんとかお願いして仲間の仕事を手伝う・・・。でもどれも、時間がかかったり、その場しのぎだったり、自分がやりたいことではなかった。そんな時に、ロバート・キヨサキの「金持ち父さん、貧乏父さん」を読んで、「投資」に開眼したのである。
労働から収入を得ていると儲かれば儲かるほど、自分の時間が無くなるラットレースに巻き込まれる。そうではなく、収入を生み出す「資産」を作って生活する生き方。その資産を作るために働くことで、その後その資産から継続した収入を得るという考え方である。これにはピンと来た。もし本当に実現できたら素晴らしいと感じた。
これまでのサラリーマンや独立コンサルタントは、自分が働けなくなれば収入も終わりである。でも、継続収入が入る仕組み、言いかえれば、「キャッシュフロー・システム」を複数作れれば、自分に何があっても生きていける。家族を養っていける。そして、そのキャッシュフローシステムを得るには、自分で立ち上げる「起業」か、既存のシステムを買う「投資」がある。自分には投資が一番現実的に感じた。
個人向けの投資で身近なのは株式投資である。あとはFXなど。当然私もその分野も研究したし、実際に株式投資やFXもやっている。でも、景気にあまり左右されず、毎月安定したキャッシュフローが入る投資としては「不動産」は最高である。最も身近な投資対象だし、金額も数百万円から始められる。
よくREITはどうか?と聞かれるが、確かにプロが複数の物件に上手く分散して投資・管理してくれるのは魅力的だが、一方で、その投資対象を自分は十分見たわけではないし、相場によって価格が変動する金融商品でもあり、当然各種管理料などフィーも抜かれている。その運用を行っているファンドマネジャーは投資家が損をしても直接的には腹の痛まないサラリーマンであったりもする。
私は、経営コンサルタントをやっていたので財務分析も自分でできるし、なにより投資するものを十分理解するということが投資の鉄則だと思う。そう考えたとき、まずは現物の不動産に自ら投資してみることにした。シンプル・イズ・ベストだ。
そして、家族を養って生きるために、不動産というキャッシュフローを生み出す事業システムへの投資、つまり「事業投資」を開始したのである。
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