バフェットのバークシャー・システム 3つの業務機能の優位性とは?

ノマド投資家 小泉雅史です。前回の続きで、今回はウォーレン・バフェットが経営するバークシャー・ハサウェイの成功要因である「バークシャー・システム」の3つの業務機能について、その優位性をもう少し詳しく見てみたいと思います。

 

バークシャー・システムの3つの業務優位性とは?

1. 保険料フロートによる低コストでの資本調達
2. 企業の本質的価値を下回る価格で投資するバリュー投資手法
3. 買収した子会社の事業管理方法

 

まず、バークシャーが優れるのは保険料フロートを活用した低コストでの資本調達システムを企業内に構築したことです。企業投資・買収するには原資が必要です。バフェットは当初、バフェット・パートナーシップという投資組合を組成して投資原資を得ていましたが、バークシャーが1967年にナショナル・インデムニティを買収した際、低コストの「フロート」を生み出す保険会社の仕組みにいち早く気付いたそうです。

 

フロートとは、保険加入者が支払う保険料から当座の保険金支払いのために確保するキャッシュ(準備金)を差し引いた残余で、将来の保険金支払いまで運用に回すことができるお金です。2014年末時点でのバークシャーのフロート額は840億ドルもあるそうです。バフェットはこのフロートを使って自己資本にレバレッジをかけて投資を行ってきたわけです。例えば、不動産投資でも銀行からの融資を使って自己資金にレバレッジをかけて、より大きな物件への投資を行いますが、バフェットは投資資金を低コストで巨額に調達する「子会社」を自前で作ってしまったわけです。

 

さらに、買収した他の子会社からの余剰キャッシュフローや上場企業株投資の売却益も加わるわけですから、それらの巨額な投資原資を確保できていることが、バークシャー成長の最大要因と言えると思います。

 

実際、保険会社はバークシャー・ハサウェイの中核事業です。1996年にディスカウント自動車保険のGEICO(ガイコー)も完全買収、非公開化。1998年には損保・再保険会社のジェネラル・リを、2007年にはオランダの損保会社、NRGを買収しました。さらに2007年にはバークシャーハサウェイ・アシュアランスを創業し、金融保証保険業務にも参入しています。2014年現在バークシャー・ハサウェイの売上割合は保険部門が23.4%、BNSFが11.9%、エネルギー部門が9.0% マクレーンが24.0%、製造部門が19.9%、サービス・小売部門7.3%、ファイナンス部門が3.4%、投資損益が2.1%だそうです。

 

次のバークシャー成功要因は、企業の本質価値を下回る価格で投資するバリュー投資手法です。バフェットのバリュー投資については、多くの書籍が出ていますので詳細は割愛しますが、バフェットは自分の強みをCapital Allocationに特化させていることに注目すべきです。本業で利益を上げることが買収した子会社CEOの仕事だとすると、バフェットの仕事はその子会社の余剰キャッシュフローを純粋持ち株会社であるバークシャーに集め、最も投資効率が高い新たな機会に再投資することです。

 

バフェットはこれまでの経験から、「多くの事業会社CEOは本業の経営は得意でも、余剰資金の再投資は上手でないことが多い」と語っているそうです。つまり、株主利益の観点から考えると、事業会社のCEOはバフェットのような優秀なCapital Allocatorと組むことで、株主利益の最大化を図れる余地があるということです。

 

またバフェットは一方で、バークシャーの本業であった紡績工場事業を敏腕経営者を配置しても立て直せなかった自身の経験から、「衰退事業には名経営者も勝てない」との学びを得たそうです。そして、バフェット・パートナーシップ時代からの様々な産業への豊富な投資家経験により、「上手く行く事業と行かない事業を、事業会社のCEOより上手く見分けられるようになった」とも語っています。実際、シーズキャンディーの買収成功体験などから、「良質の企業とCEOを、そこそこの価格で買収する」ことが最も成功確率が高いと考えているようです。

 

最後に、買収した子会社の事業管理方法にも独特のものがあるようです。その特徴は、「買収子会社は基本的に永久保有」、「既存CEOが続投」、「CEOの定年制度無し」、「子会社オペレーションへの本社の関与は基本的に無し」、「官僚的ではない組織運営」、「子会社への徹底した権限移譲」、「子会社CEOにもバークシャー株を自前で購入させ、株主と同じ位置に立たせる」など。

 

バークシャーは事業会社オーナー経営者に、ウォール街のプレッシャーを受け続ける「IPO」と、経営に大きく関与されることが多いファンドによる「バイアウト」の中間ぐらいの希少な選択肢を提供しているそうです。バークシャーの子会社になると、適正な報酬と長期雇用、現場への徹底した権限移譲により、経営者は安心して事業経営に専念できます。また、バークシャー株を自前で購入することで株主と同じ目線で経営でき、余剰資金は本社のバフェットに集中させることで新たな機会に再投資される。

 

結果、バークシャー・コングロマリット全体で複利によるキャッシュフローの自己増殖が進み、株価上昇によって子会社CEOも持ち株リターンが得られる「エコシステム」が確立されているわけです。そして、バークシャー・システムが一種の「ブランド」となり、自ら会社譲渡を望む「持ち込み案件」が増えることで、バークシャーにとって、さらに優位な投資発掘機会を得ることにつながっているから驚きです。

 

まとめると、バークシャーは「低コスト資金調達」「成功確率が高いバリュー投資」「子会社への権限移譲と本社への資金集中の徹底」を効果的に連動させることで、事業キャッシュフローが雪だるま式に積み上がり、前回説明したような「右肩上がりの株価成長グラフ」となったわけです。改めて、本当に素晴らしい仕組みであると実感します。

 

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