連続増収増益を生み出す経営システム

連続増収増益を生み出す経営システム

経済危機を乗り越えて、連続増収増益を遂げる企業とは

リーマン・ショックやコロナ・ショックなど、経済危機は短期間に多くの企業に深刻なダメージを与え、経営不振に陥る企業が相次ぐ。従業員の賃金カットや解雇、取引先への未払いによる連鎖倒産、市場の株価下落による企業の株主価値の毀損など。不振企業はステークホルダー(利害関係者)を巻き込みながら、社会の健全性を奪っていく。

政府も社会の経済回復を目的として、多額の公的資金を投入するケースが多い。たとえば、2020年度の新型コロナウイルス感染症対策では、全国民に一律10万円の特別定額給付金が支給され、13兆円の財政支出が行われた。同年度の緊急経済対策全体では、実に25.6兆円に上る国の一般会計支出がなされたのである。このように、経済危機は国家財政や社会経済に多大な影響を及ぼす。

一方、同様の経済危機に直面しながらも、業績を大きく落とすことなく、成長を続ける企業も存在する。「連続増収増益企業(Companies with Consecutive Revenue and Profit Growth:CRPG企業)」である。CRPG企業は、経済の波に翻弄されることなく、持続的な収益成長を実現し続ける点で際立っている。

たとえば、ドン・キホーテを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは、2008年のリーマン・ショック、2015年のチャイナ・ショック、2020年のコロナ・ショックといった複数の経済危機を乗り越えて、2024年時点で35期にわたる連続増収増益を成し遂げている。
 日本国内の上場企業は約3,900社存在するが、10年以上にわたり連続増収増益を達成しているCRPG企業は2024年度には40社存在する。内訳は、20年以上が4社、15年以上が9社、10年以上が27社である。

こうした企業は、安定した雇用の創出、取引先との長期的な関係の構築、株主への継続的なリターンの提供、そして納税による国家への財政貢献により日本経済を支えている存在である。このような優良企業が増えることは、日本経済の安定化と社会の発展に資するものである。

連続増収増益企業(CRPG企業)の経営の仕組みを解明

本書は、連続増収増益を達成しているCRPG企業を取り上げ、その成功の背後にある経営の仕組みを明らかにすることを目的としている。また、一般的な財務指標による企業分析では見えにくい企業の「構造」に光を当てるために、「システムズアプローチ」という分析方法を採用する。

システムズアプローチは、分析対象をシステム(複数の要素の相互作用による仕組み)と捉える考え方である。本書では、連続増収増益を達成しているCRPG企業の経営をシステムとして捉え、その構成要素間の関係性や相互作用を俯瞰的かつ体系的に解明する。

その具体的な手段として、本書ではシステムズエンジニアリング手法およびUAF(Unified Architecture Framework)というエンタープライズアーキテクチャフレームワーク(企業の業務、システム、データなどを体系的に設計・管理する枠組み)を用いる。これらの技法を企業の経営構造分析に応用することで、CRPG企業の経営を他の企業が参考にできる「経営システム」として可視化することを試みる。

また、本書では企業の経営目的、外部ステークホルダーとの関係性、ビジネスモデル、それらを支える内部資源など多角的な視点から分析するために、「パーパス経営」「ステークホルダー」「ビジネスモデルキャンバス」「VRIO」といった4つのビジネスフレームワークを統合した独自の企業分析手法を考案し、CRPG企業に求められる共通条件の抽出に活用した。

この抽出された共通の条件(共通要求)は、CRPG企業の増収増益を生み出すビジネスケイパビリティ(組織的なビジネス能力)を明らかにする上で基盤となる。さらに本書の後半では、それらのビジネスケイパビリティを企業が備えることができる「CRPG経営システム」のアーキテクチャ(基本構造)をUAFを用いて記述した。

本書ではこうした一連の分析を通じて、CRPG企業に求められる経営システムを、「長期安定経営」「ストックビジネスの構築・運営」「経営リソース活用」からなる「ストック型経営システム」と位置付けている。

この経営システムは、継続収益を生み出すビジネスを基盤とし、そのビジネスを通じて蓄積される経営リソース(ヒト・モノ・カネ・データなど)を効果的に再投資し、雪だるま式に経営基盤を強化する複利的な安定成長構造の仕組みを特徴とする。この安定成長の仕組みこそが、CRPG企業が外部環境の変動にも耐えうる強固な経営基盤を持ち、連続増収増益という業績を生み出している本質である。そのようなCRPG企業の経営の仕組みを「経営システム」と捉え、基本構造を可視化したことが本書の意義である。

本書の目的

本書は、著者が慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)にて行った研究を基盤としている。学術的な知見を土台にしつつ、経営の実務に活かせる考え方や技法を提供することが、本書の目的である。

現代は、経済、社会、技術、環境などが複雑に絡み合い、企業経営においても「一過性の成功」ではなく、「持続可能な仕組みづくり」が求められている。そうした背景の中で、本書は企業が持続的成長を実現するための経営の仕組みを設計するための一助となることを目指している。

ゆえに自社の長期的な安定成長を望む企業経営者や事業責任者はもちろんのこと、将来の経営を担う若手ビジネスパーソン、経営コンサルタント、MBA学生、あるいは企業経営分野に興味を持つシステムエンジニアやシステムズエンジニアリング分野の学生および研究者にとっても示唆に富んだ内容であるだろう。

混沌と変動の時代において、企業の成長を持続可能な経営システムとして設計し直すための出発点として、本書が役立つことを願っている。

本書の構成

本書は、連続増収増益企業(CRPG企業)に共通する経営の仕組みを「経営システム」として明らかにすることを目的として構成されている。CRPG企業がどのようにして持続的な成長を実現しているのか、その本質に迫るために、ビジネスフレームワーク分析とシステムズアプロ―チを統合させた「経営+システム」の観点から全6章で展開する。

第1章「増収増益企業が求められる背景」では、企業が直面する経済危機の実態とその影響を概観し、リーマン・ショックやコロナ・ショックといった事例を通じて、経営の脆弱性が顕在化する一方で、それを乗り越えて成長を続けるCRPG企業の存在を紹介する。

第2章「システムズアプローチによる企業構造分析」では、「経営+システム」による企業分析手法として、システムズエンジニアリング、エンタープライズモデリング、企業分析フレームワーク、CRPG企業の選定方法など、本書におけるCRPG企業の経営構造分析の全体像を示す。

第3章「CRPG企業のビジネス経営要求」では、連続増収増益を実現している国内上場企業を具体的に選定し、独自に設計した企業分析フレームワーク(パーパス経営、ステークホルダー、ビジネスモデルキャンバス、VRIO)を用いて、選定したCRPG企業のビジネス経営の実態を分析する。そこから、CRPG企業に共通して見られる経営上の特徴や要求事項を「共通要求」として抽出する。

第4章「CRPG経営システムコンセプト」では、前章で抽出された共通要求に基づき、CRPG企業が持続的成長を実現するために備えるべき経営システムの基本コンセプトおよびシステム構成について定義する。

第5章「CRPG経営システムアーキテクチャ」では、エンタープライズアーキテクチャフレームワークのUAF(Unified Architecture Framework)を用いて、CRPG企業の経営システムコンセプトを具体的な経営システムのCapability(システム能力)、Operational Activity(業務活動)、Operational Performer(業務実行者)、Resouces(経営資源)などの観点からシステム構造と振る舞いを記述し、CRPG経営システムのアーキテクチャ(基本構造)を明示する。

第6章「CRPG経営レベル診断と戦略的導入プロセス」では、これまでの内容を踏まえて、企業が実際にCRPG経営システムの導入を検討する際の出発点として、「CRPG経営レベル診断チェックリスト」を提供する。読者はこのチェックリストに取り組むことで、自社の現状を把握するとともに、次のCRPG経営システムの戦略的導入プロセスにおいて、自社が着手すべき適切なフェーズを明らかにできる。戦略的導入プロセスでは各フェーズにおけるCRPG経営システムの段階的な構築方法を解説する。

本書は、連続増収増益を続ける企業(CRPG企業)の成功要因を「経営システム」として捉え、学術的な理論と実務への応用をつなぐ視点から整理したものである。全6章を通じて、背景理解から分析方法、企業事例、システムコンセプト定義、アーキテクチャ記述、導入のプロセスまでを一貫して示している。

読者は本書を手がかりに、自社の現状を診断し、必要な経営能力やリソースを見極めながら、CRPG経営システムのアーキテクチャを導入することで、長期安定成長に向けた取り組みを進めることができるだろう。2026年2月

本書の目次

第1章 増収増益企業が求められる背景
第2章 システムズアプローチによる企業構造分析
第3章 CRPG企業のビジネス経営要求
第4章 CRPG経営システムコンセプト
第5章 CRPG経営システムアーキテクチャ
第6章 CRPG経営レベル診断と戦略的導入プロセス

単行本(ソフトカバー)
出版社: セルバ出版 
言語: 日本語
ISBN-10:  4868510355
ISBN-13: 978-4868510352
発売日: 2026/4/6

■全国主要書店にてお求め可能です。お近くの書店に在庫が無い場合はお取り寄せをご依頼ください。また、アマゾンなら全国どこでも即購入可能です。

アマゾン購入ページはこちらをクリック