ノマド投資家 小泉雅史です。上の写真で私の横にいるのはバークシャーハサウェイでバフェットのパートナーを務める著名投資家チャーリー・マンガーです。
先日の渡米では、昨年に続き再びウォーレンバフェットが経営するバークシャーハサウェイの株主総会に出席してきました。この総会は世界のバリュー投資家のメッカ巡礼と言われていて、著名なファンドマネジャーなどを含む4万人ぐらいが米国ネブラスカ州のオマハに集結します。例年通り、総会では午前・午後にわたりバフェットとマンガーが株主からの様々な質問に回答するのですが、彼らは首尾一貫して投資と企業経営の原理原則について話します。
これは毎年出される株主向けのレター(バフェットからの手紙)にも過去色々書かれていますので一度読まれると大変参考になると思います。過去の手紙をテーマ毎に編集した書籍「バフェットからの手紙 (ローレンス・カニンガム)」も出版されていますので、ぜひ読んでみてください。
CNBCの公開生放送で見たバフェット、マンガー、ビルゲイツ
昨年に引き続き、私は総会翌日早朝に放映されるCNBCの公開生放送も見に行きました。撮影現場では、ほんの数メートル先でバフェット、マンガー、バークシャー取締役のビルゲイツがキャスターのベッキークイックの質問に答えています。今回は撮影終了後、バフェットとマンガーに歩み寄り、二人と握手させてもらいました。またビルゲイツにはお願いして二人で写真も撮らせてもらいました。
彼らを間近で見ていて感じたこと。それは、総会当日のパーティーで出会った著名ファンドマネジャーのビル・アックマンやマリオ・ガベリなどもそうですが、ファンドマネジャーや投資家という職業がアメリカでは社会的にしっかりと認知されており、知的で憧れの職業にもなっているということです。日本ではファンドというと企業乗っ取りやアクティビスト的はネガティブなイメージもまだ多そうですが、アメリカでは投資(資産運用)は個人や企業の余剰資金を増やすための重要な仕事なのです。
なぜ日本とアメリカではそのような乖離が起きたのか?私の個人的な見解ですが、米国では経済・金融システムがこれまで有効に機能していて、長期投資の多くは成功しているからだと思います。実際にNYダウもリーマンショック前の最高値を超えていますし、不動産価格もケース・シラー住宅価格指数を見ると、やはりリーマンショック前の最高値近くまで回復してきています。つまり、企業株・不動産共にチャートはこれまで一貫して右肩上がりなのです。
一方、日本の株・不動産価格は1990年のバブル崩壊以降、当時の最高値までの回復には全く至っていません。結局、日本では未だバブル時の投資家は報われていないわけです。この違いはとてつもなく大きいと思います。アメリカでは長期投資は成功しており、日本では失敗している。バブル以降、「投資は危険」が定着しているわけです。
そして残念なことに、政府はアベノミクスでNISAなどの制度も新設して「貯蓄から投資」を大々的に推奨して来ましたが、昨年の日本郵政3社の公開後の株価低迷を見ても分かるように、結局また多くの投資家が投資失敗に陥っているわけです。不動産も都心の一部を除き資産価値は大きく上昇しておらず、多くの国民の持ち家も老後の資産になるかは極めて不確実です。いや、このまま人口減少と新築供給が続けば、決して頼れる資産にはならないでしょう。
日本経済復興のカギは起業家と投資家
一方、これからの日本経済の復興を考えたとき、一番重要なことは「国民所得の増加」です。日本経済・地方経済の停滞は国民の所得停滞・消費低迷が主因であり、人口減少はもう一つの大きな構造的問題です。グローバル化経済では、世界市場への製品・サービス販売による日本企業の外需成長、訪日外国人の取り込みによる内需拡大など、外国依存で国民所得を増加させることは可能ですが、いずれにしろ国民の所得が増えない限り、国内消費も税収も増えないわけです。
そして、経済成長の原動力となるのが、雇用を生み出す「起業家」、起業家の構想実現を支援する「投資家」、事業を推進する「従業者」の創出・育成・確保です。地域経済の活性化には、優秀な起業家・投資家・従業者が必要であり、事業の創造・長期安定成長によって彼らの所得も増加し、消費も拡大していきます。この起業家・投資家・従業者の創出・育成において、日米では状況が大きく異なるように感じています。
日本には優秀な従業者、つまり大企業のサラリーマンは多くいますが、優秀な起業家や投資家の数では米国に大差をつけられている可能性が高いです。具体的な数字は見ていませんが、現地視察をしているとひしひしと感じます。
今回の渡米時に何度か聞きましたが、アメリカでは大企業の経営者になるよりも起業家で成功する方が尊敬されるそうです。また、前述のファンドマネジャー達の活躍を見ても、投資家も経済成長の要職としてしっかり認識されています。つまり、新たな雇用を生み出す起業家、起業家の構想実現を支援する投資家に優秀な人材が集まり活躍することで、経済を成長させる原動力となっているわけです。この違いが最も重要ではないかと思います。
もっと言うと、起業家が新たな雇用を創出し、比較的流動性が高い労働市場の存在によって企業も構造改革を断行することで競争優位を維持し、成長し続けるアメリカ経済に投資家(資産運用者)が企業や個人の余剰資金を再投資することで、さらに経済成長を促す。さらにアメリカ経済に惹かれた移民が諸外国から集まることで人口も増加する。このサイクルがしっかり機能することで、国民も老後に必要な資産(現金、株や不動産)を蓄えられるのだと思います。
それに比べて日本の場合は、大企業志向と硬直的な雇用、企業衰退によるリストラ・株価低迷、株や不動産の資産形成失敗、少子高齢化による人口減少、と基本経済が上手く回っているとは思えない状況です。アメリカにも所得格差拡大などいろいろ問題もありますが、日本の構造的問題はかなり致命的です。今後の日本の経済復興を考えたときに、経済原動力である起業家と投資家の重要性がさらに増していくはずです。
バフェットが考える投資とは?
一方で、バフェットは投資を成功させるには、長期にわたって変化しない独占的企業に投資しなさいと言っています。技術革新が頻繁に起こるような産業には投資するなと。これは起業家による変革とは相反する姿勢であり、とても興味を引く指針です。このあたりについては、また今度詳しく書きたいと思いますが、変化が全て良いものでもないということだと思います。
つまり、変化が激しすぎると新規参入も容易になり競争も激化しやすい。そして、過当競争下では、どの企業も利益が減り、短命となりやすい。消耗戦のような競争環境では、起業家、投資家、従業者全てが、結局は苦労ばかりで長期的に報われないということではないでしょうか。そのような激動する産業・企業への投資を避け、長期安定成長が見込める産業や企業を選別して長期投資することで、もっとマイルドで穏やかな安定した社会を作り出せると考えているのかもしれません。
資本主義とは競争を前提とした弱肉強食の結構残酷な社会ですが、だからこそ、単なる横並びによる過当競争を避け、独創的な独占事業を生み出す起業家、そこに投資する投資家、そこで働く従業者の活躍が非常に重要なのだと思います。
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